保育园の待机児童问题やワクチンの适正分配など、さまざまな社会课题において「最适な组み合わせ」を见つける键とされるマッチング理论。採用や配属といった人事面で活用することで、より适切な人材配置を行い、早期离职を防ぐことが期待されます。

今回は、現代ビジネスに欠かせないマッチング理論の第一人者である、東京大学大学院経済学研究科?教授の小島 武仁氏と、乐鱼(Leyu)体育官网ジャパンの中林 真太郎、大池 一弥、冈 智諒による座談会を実施。組織運営におけるチャレンジとソリューションを解き明かしていきます。

【インタビュイー】

小島 武仁氏:东京大学大学院経済学研究科?教授、东京大学マーケットデザインセンター?センター长
マーケットデザインの主要理论である「マッチング理论」を専门としている。2012年にノーベル経済学赏を受赏したアルヴィン?ロス氏らとともに数々の研究成果を発表し、社会问题を解决する具体的な方法の开発を行っている。

中林 真太郎:株式会社碍笔惭骋アドバイザリーライトハウス 代表取缔役?パートナー
大池 一弥:碍笔惭骋コンサルティング株式会社 執行役員 ピープル&チェンジ統轄パートナー
冈 智諒:碍笔惭骋コンサルティング株式会社 ピープル&チェンジ マネジャー

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(左から)碍笔惭骋 冈、大池、东京大学大学院経済学研究科 小岛教授、碍笔惭骋 中林

学理を社会に実装する「东京大学マーケットデザインセンター」

中林:2020年に小岛先生が立ち上げた东京大学マーケットデザインセンター(以下、鲍罢惭顿)は、学术研究にとどまらず、公司や自治体などの课题に対し、さまざまなアプローチを「社会実装」している点で高い関心をもっています。

小岛氏:ありがとうございます。伝统的な経済学を「理学」とするなら、我々のやっていることは「工学」に近いと思っています。たとえば、ニュートン力学の理论だけを用いて桥をつくっても崩れてしまいます。调达可能な材质の强度や、その场所に吹く风の强さ、状况に応じたカスタマイズが社会実装には不可欠というわけですね。

鲍罢惭顿では、マッチング理论をキーワードに研究と実践を重ねています。公司の人事配属や就职活动、入试などの场面で「お互いに幸せになれるようなマッチング」を実现する仕组みを设计し、さまざまな団体に使っていただいています。

中林:私が共感している点の1つですが、小岛先生のアプローチは数学的なセオリー等、グローバルレベルで研究、展开されている基本论理、つまり「考え方」を现场に持ち込んで、その科学的有効性を具体的に実証されている姿势に刺激を受けております。これは公司や社会の课题を数学的手法で解くという方法はソフトの侧面であるデータとアルゴリズムが増加する社会において、今后より一层高まる考え方だと思っています。

大池:近年は、ビジネスと纯粋な経済学の接点が今まで以上に増えているように感じますね。

小島教授

東京大学大学院経済学研究科?教授 小島 武仁氏

小岛氏:学问の世界においても、「社会に使える実学を见直していこう」という大きな流れがあると思います。実は、マッチング理论自体は半世纪以上前からあったのですが、その时は数学者の思考実験として见过ごされていました。あくまでもパズルのようなもので、本当に社会に役立つとは谁も気づかなかったのです。

しかしその后、この方法论が実际に使われていることがアメリカで発见されます。内定辞退や青田买いが多発していた研修医の配属问题に対して、病院は谁が欲しいか、研修医はどの病院に行きたいか、希望ランキングのリストを全部出してもらうのです。それをコンピューターで処理した结果、よりよいマッチングができるようになりました。これまで実际に活用されていなかったマッチング理论ですが、「実は役立つのだ」とわかったわけです。

この最初のマッチング理论は非常に上手くできているものの、利用シーンによっては使えなかったり、それだけでは解决しない问题もあったりします。よりさまざまな情报を加味してマッチングできるようにするなど、さらに発展させるべく研究を进めています。

マッチング理论で「配属ガチャ」问题にアプローチ

大池:実际にマッチング理论は、どのように公司で応用されているのでしょうか?

小岛氏:たとえば我々は、医疗机器メーカーのシスメックスさんと「配属ガチャ」の课题に取り组みました。せっかくコストをかけて新卒を採用したのに、希望した部署に行けず、やる気を失ってしまうような事态を减らしたい、という目的です。

まずは新入社员と各部署それぞれが自身をアピールして、相互理解を深めてもらいます。そして、どの部署に行きたいか、谁を採用したいか、希望リストを提出してもらいました。その情报を元にシミュレーションを行い、配属先を决定したのです。

结果として、もともと离职率は低い公司様でしたので、その点については大きな変化がなかったものの、社员の満足度が非常に高くなりました。定期アンケートで他部署に异动したいと回答する社员の数も减っています。

乐鱼(Leyu)体育官网 冈

碍笔惭骋コンサルティング ピープル&チェンジ マネジャー 冈 智諒

:昨今エンゲージメントの向上が公司の课题となっていますが、社员が退职する理由には、大きく3つあると考えています。すなわち「その公司そのものに合わない」「赁金が合わない」「上司とのコミュニケーションが悪い」です。マッチング理论の适用によって、相性问题を解决できれば、部署の雰囲気が良くなり、适切に登用されて、选ばれる会社になっていくという好循环を起こせると感じます。

人的资本経営とデータ分析の课题

:マッチングの际、第1希望は础、第2希望は叠とランキングにするだけでなく、「こういう思いで第1希望です」といった心理的でなかなかデータ化しにくい、理由や热意の部分を、マッチング理论に组み込むことも可能なのでしょうか?

小岛氏:重要な质问ですね。追加で情报を得る场合、それが本当に価値を持つのか、吟味する必要があります。たとえば採用面接时に「ウチの会社は第1希望ですか?」と学生に闻いても、その答えには何の価値もありません。みんな驰贰厂と言うに决まっているからです。人の心を理解するのは难しいものです。本音を隠してしまうこともあります。なんでもかんでも质问すればいいわけではなく、本音を引き出し価値のある情报を得るためにコストを支払えるかどうか、といった工夫が必要です。

大池:もしうまく情报が取れたら、マッチングの満足度はもっと上がりますか?

小岛氏:お金のない人にご饭や物资を配る「フードバンク」の活动例についてお话ししますね。これは寄付ベースの活动で、受け取り侧の需要がわかりませんでした。その地域に余っているものを送ったが、必要なものではなく结局无駄になる、ということが起きてしまっていました。そこで彼らはオークション制を导入しました。タダでもらえるなら何でも欲しいと言うでしょうけど、多少なりとも身銭を切ってもらうことで、地域ごとに切実に欲しいものの浓淡がわかるようになり、结果として効率化につながったのです。

中林:施策の结果を、どのような指标で测るかも重要ですね。従来の指标/碍笔滨と呼ばれるものの多くは経済的観点に重点をおいてきました。その指标によって人や组织、社会を动かしていくという観点からみれば、観点の异なる新しい指标/碍笔滨をデザインするというアプローチも重要なことだと感じています。

小岛氏:一番よく使われるのは金銭评価ですが、データセットにお金が无い场合は、ある程度客観性のある、选好を推定できるような指标をピックアップしています。

乐鱼(Leyu)体育官网 中林

乐鱼(Leyu)体育官网アドバイザリーライトハウス 代表取締役?パートナー 中林 真太郎

:昨今は「人的资本経営」が注目されており、人材の生产性にフォーカスされています。私も人材の最适配置の分析支援などに携わっているのですが、一番気になるのが効果测定です。人事のサイクルは1年と长いので、なかなか定点観测が难しく、パフォーマンスをどう计るべきかに悩んでいます。

人事のデータはそのほとんどがテキストです。そこで、人事の本质はテキストデータに存在するのではないかと着目し、碍笔惭骋が独自に开発した自然言语分析ツールを用いて、人事业务の高度化のご支援をしています。小岛先生は、マッチング理论における、テキストデータの活用についてはどのようにお考えですか?

小岛氏:私たちも同じように苦労をしています。大规模なマッチング理论を导入する际には、よい指标がなかなか见つかりません。すでに膨大に存在しているテキストデータを活用することは、非常に大事だと思います。

ただ、あとから解釈をするためには、データの生成段階から着眼しなければなりません。どのようなデータを用意し、規格化すべきなのか? といったことは、多くの企業の協力を得て、検証を進めていきたいと考えています。

マッチング理论を成功させるために必要なこと

小岛氏:私は究极的な愿いとして、みんなが幸せになれば良いと思っています。それを実现するための手段としてマッチング理论があります。理论の骨子は1962年に考案された「枯れた技术」と言えますから、それだけ社会実装はしやすいと思っています。先端技术がいきなり応用されることはなかなかありませんから。「せっかくあるのに使われていなかった技术理论」として、兴味を持っていただければと思います。ただ、いきなりこの理论を使いましょう、と言われても困るでしょうから、各公司?団体が独自にカスタマイズしていくことを、今后もお手伝いしていきます。

中林:マッチング理论のような数学的処理(アルゴリズム)をビジネスに実装する场合、どれくらいのプロジェクトの规模感で试していくべきなのでしょうか?あまりに大きな社会実装で试すと复雑で结果が不透明であったり、検証が难しかったりと、困难になることが想定されます。

小岛氏:大きな问题に対して础叠テストを実施するには、非常にコストがかかります。统计的に有意义なものをやることは前提として、実験室的な感覚で试せる规模感が良いと思います。

:今回のお话を闻いて、人事にマーケティングや経済学の手法を取り入れていかねばならないと强く感じました。人事データは机微な个人情报を含みますから、どのように扱うかも含めて、碍笔惭骋として引き続き研究していきます。

乐鱼(Leyu)体育官网 大池

碍笔惭骋コンサルティング 執行役員 ピープル&チェンジ統轄パートナー 大池 一弥

大池:配属ガチャという言叶が流行るように、ほとんどの日本公司では、会社は选べても部署は选べないのが现状です。生产性を高めていくための施策として、非常に参考になるお话を闻けたと思います。具体的に「マッチング理论を取り入れていきたい」と考えた公司は、どのような準备をすべきなのでしょうか。

小岛氏:「目的を明确化し、それに応じたソリューションを选ぶこと」と、当たり前のことをお伝えした上で、选好分析に详しい人に闻いてみる、ということが大事だと思います。施策のうわべだけコピーしようとして失败する例は、いくらでも挙げることができますから。

私たちの场合、「アルゴリズムのカスタマイズまでして欲しい」「マッチング理论について浓い讲义をして欲しい。あとは独力でやりたい」という要望に応じて、公司の支援をしています。

中林:数学的理论に基づいた学术的アプローチで、社会构造を変えられる、日本の现场?実务に贡献できるというのは、アルゴリズムが社会の运営に浸透していくようになっていくと考えると、大きなポイントだと思います。

大池:私たち碍笔惭骋もプロフェッショナルファームとして多様な専门性がありますが、个々の领域に闭じるのではなく、互いの力を掛け合わせることで、より大きな社会的価値を提供できると考えています。

小岛氏:「あらゆることを人事视点で深掘りする」という公司的縦轴と、「人事を含む社会现象を俯瞰する」という大学的横轴を掛け合わせれば、お互いを补えることはあると思います。そうすることで、本质をつかみ取れるアプローチをしていきたいですね。

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(左から)碍笔惭骋 冈、大池、东京大学大学院経済学研究科 小岛教授、碍笔惭骋 中林

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